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内部統制とは?内部統制を理解し、整備・運用するポイントをご紹介!

内部統制という言葉が広く知られるようになり、意識し始めた企業が多くなっています。 企業で整備、運用していくために、まずは正しく理解することが大切です。 ここでは誰でもすぐにスタートできるための基本的な概要から目的、メリット、導入ポイントまで幅広くご紹介します。

内部統制の基本を知ろう

内部統制とは?

内部統制とは、組織が健全にあり続けるため、働くすべての人が守るべき業務ルールや制度作りを行うことです。 効率的に目標を達成するために組織内でルールを作る、社員の業務の流れを整備していく、といった内容ですが、身近な例をあげると、情報漏洩のリスクがあるためUSBメモリでデータを持ち帰り自宅で作業することを禁じる、ITを活用して既存の業務フローを機械化するといったルールの設定も内部統制のひとつに当てはまります。

なぜ必要なの?

内部統制が重要視されるようになったきっかけは、2009年以降内部統制報告制度によって、大企業を中心に内部統制報告書の作成が義務づけられるようになったことが背景にあります。 2000年代前半に、大手企業による不祥事が多発したことを受けて制度が設けられました。 しかし、今も粉飾決済やリコール隠し耐震偽装食品表示偽装、事故米、食品の異物・毒物混入など企業不祥事はなくなっていません。 経営者だけではなく、従業員を含め、企業で働くすべての人の倫理観や責任意識を持たせるために仕組みによる管理を行い、人為的なミスや不正を防ぐことは企業が成長してく上で欠かせないことです。 内部統制は上場企業だけではなく、中堅・中小を含め全ての企業が行うべきものなのです。

内部統制の基本を知ろう

内部統制の目的と導入ポイント

内部統制の目的は大きく以下の4つに分けられます。

1.業務の有効性及び効率性

業務に関わる人員、時間、ツール、コストなど、すべての要素が適切にはたらくための体制を整えることが大切です。 無駄に時間や人員がかかりコストが増えているといった業務はありませんか?経営者にとっては経営を安定することにつながり、従業員にとっては効率よく業務を進めることにつながります。 内部統制で業務のプロセスやルールを設定しましょう。

2.財務報告の信頼性

正しい財務報告が行われず、粉飾決算をはじめ虚偽や誤りの報告をすると、企業と関わるすべての人たちに多大なる損失を与えます。 投資家、株主、銀行、取引先などすべての人たちは多大な損害を受け、企業自身にとっては信頼を失うことになります。 財務報告の正確性は、企業の信頼性を高め、成長のための投資を集めるためにも非常に重要です。

3.事業活動に関わる法令などの遵守

コンプライアンスという言葉も一般的になり、法令遵守が重要であることは周知されてきています。 社外である世間から見た社会的信用を得るためだけではなく、コンプライアンスを意識することは、社内の従業員からの信頼を強固なものにし、企業活動を円滑に進めるために必要な要素です。

4.資産の保全

企業が事業を行うためには、言うまでもなく資産が必要です。 事業は、企業の資産を適切に管理し活かしていくことから始まります。そしてその事業を通じて利益を生み出すのです。利益を出し、事業を広げていくために資産を取得し管理し、活用する、そして処分するといった一連のプロセスを正しく整備する必要があります。

以上、4つの目的が達成されてはじめて内部統制が正しく取れている企業といえます。 4つの項目でひとつでも欠けていれば、企業の経営状態、信頼性、成長度合いも低くなるでしょう。 企業が存続する上で内部統制は欠かせないのです。

内部統制構築のために必要な構成要素

前述の4つの目的を達成し、内部統制を構築するためには、以下の6つの基本的要素が必要です。

1.統制環境

統制環境とは、企業の社会的責任、倫理観、企業理念、経営者の方針・意向、企業風土といった企業の思想面での特質のことです。 後術する2〜4の土台となり、企業で働くすべての人が正しい思想を持つことが内部統制では必要不可欠で最重要項目とされています。統制環境が整備されてはじめてその他の要素が形成されます。

2.リスクの評価と対応

前述した内部統制の4つの目的(業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令などの遵守、資産の保全)を成し遂げるためには、何が障壁となっていて、何がリスクとして想定されるかを精査し、評価することが重要になってきます。 起こりうるリスクを回避するために、事前に正しく対応することまでを指します。

3.統制活動

統制活動とは経営者の意向や指示が従業員に理解、周知され、社内に浸透するために行うものです。 権限、職責の付与、職務の分掌などが統制活動に当てはまります。 各職務の役割を配分して整理し、各部署、役職者にそれぞれの職責や権限を正しく理解させ、組織を円滑に動かします。

4.情報と伝達

社内での情報共有はあらゆる業務を行う上で言うまでもなく重要です。 正しく情報が伝達されるためには、情報の正確性や伝達方法等を整備する必要があります。 社外に向けて情報発信する上でも社内の情報伝達は正しく取り扱われなくてはいけません。そのためにツールの選定や適切な伝達方法を定める必要があります。

5.モニタリング

社内で内部統制を行ったら、その後、問題は起きていないか、正しく運用されているかを定期的に確認する必要があります。一度策定されたものであっても運用してみると期待した効果が現れないといったことは起こりえます。その場合、迅速に改善・修正しなくてはいけません。日々の業務の中でのチェック、経営者を中心とした内部監査によりモニタリングを行い、常に最善策をとっていく必要があります。

6.ITへの対応

現代では事業、業務を行う上でITを活用することは必須であり、IT環境を整備することで効率化が期待されます。 内部統制を適切に行うためにもITを最大限に活用することが重要です。 情報共有、スピード、伝達時のセキュリティなど、企業や事業によって整備すべきポイントは変わってくるため、自社の特質を見極めることが必要です。

内部統制を行うメリット

内部統制を行うことを行うことは、必要不可欠であると同時に、企業や従業員に対してたくさんのメリットが生まれます。ここでは代表的な4つのメリットをご紹介します。

1.企業の不正防止

内部統制を整備し、運用することで、経営者、全従業員の不正リスクが下がります。 経営者による粉飾決済、従業員による経費の不正申請、情報漏洩は個人の意識に任せるのではなく、内部統制によって強固なシステム構築を行い、防ぐことが必要です。 チェック体制の強化、権限の分散化など体制を整えることでリスクを低減させることができます。

2.社員のモチベーション向上

企業の透明性が示されることで、所属している企業に対する信頼度が上がります。 また、内部統制による業務の効率化は、従業員の負担軽減にもつながります。 ITを活用し生産性を上げる、各個人の職責を明確化する、といったことはモチベーションの向上につながり離職者を減らすことにも寄与します。

3.企業の信用度を上げる

企業は内部統制の4つの目的のうちの財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令などの遵守、資産の保全、この3つを適切に行うことで社会的信用を得ます。 投資家や銀行から信用を得ることは資金を確保することにつながり、法令遵守により不正や違反を防止することは社会的信用を失うことなく事業を円滑に進めていくことにつながります。

4.業績の向上

企業が存続する上で重要なことは業績を上げていくことです。 内部統制はすべての要素が業績を上げることにつながっています。 業務の効率化、情報伝達の正確性・スピード、チェック体制などの社内ルールが整備された企業が成長することは必然的です。内部統制は社会的責任で行うことだけではなく、企業自体へのメリットが非常に大きいのです。

内部統制に関係する人とは

内部統制を実際に行う上で、誰が何をどのように行うべきなのでしょうか。 具体的に見ていきましょう。

経営者

企業の代表である経営者は、内部統制の軸となります。まずは内部統制の基盤となる統制環境の強化で企業理念や方針を定めて企業内に浸透させることが必要です。そして従業員の模範となるべく行動をとり、法令遵守を自ら示すことが必要になってくるでしょう。模範となることは規律を生み出し、内部統制を浸透させるための基礎となります。 経営者は内部統制の基本指針をつくり、社内に浸透させるための制度を構築する、そして内部統制による効果を最大限に引き出し、その結果を内部統制報告書を作成して提出するという役割を担っています。

監査役

監査役は、企業内で内部統制が正しく実施され機能しているかを判断します。 監査役には、社外の独立した立場から見る監査役と、社内の立場の中で見る内部監査人のふたつのパターンがあります。どちらも内部統制を正しく運用していくためには欠かせない存在です。 経営者が定め、進めていきたい内部統制が正しく行われるか、どのように運用していくか、そして運用後にそれらを評価し、改善すべきところは指摘し修正を行っていきます。

従業員

内部統制を運用していく中心となるのが従業員です。それぞれの職務により内部統制における役割は異なってきますが、最も重要なことは、従業員全員で内部統制に従い、ルールを守ることです。全員が内部統制を推進しなければ、目的が果たされることはありません。また、日々の業務の中で内部統制が正しく運用できてるかチェックする存在でもあります。改善すべきところは運用している現場の従業員が一番理解するでしょう。内部統制を行う上で、一翼を担う存在です。

また、取締役会や監査委員会といった組織も内部統制には重要な役割を担っています。内部統制の推進・運用方法の選定から、運用状況のモニタリング、改善・修正を行うといった内部統制の一連の流れを組織という立場で推進していきます。企業に関わるすべての人、組織が内部統制では重要な役割を担っているのです。

内部統制報告制度とは?

内部統制がなぜ必要なのか?という項目でも出てきた内部統制報告制度ですが、2006年に金融商品取引法で企業の情報開示を目的として導入された制度のひとつです。企業は内部統制報告書を金融庁に提出し、開示する義務があります。具体的には経営者が企業の内部統制を整備し、運用できているかを経営者自身で評価し、報告書として作成するものです。企業が提出する有価証券報告書に間違いがないということを表すためのものでもあります。

内部統制報告書の提出が義務づけられる会社とは?

法律の定義では、「金融商品取引所に上場されている有価証券の発行者である会社その他の政令で定める者」が対象です。つまりは、JASDAQを含め上場している企業となります。

内部統制報告書の提出義務を果たさなかった場合に罰則は?

内部統制報告書の提出がない、虚偽、誤りの内容があった場合は、以下の刑事責任が発生します。 1. 内部統制報告書の虚偽記載:5年以上の懲役もしくは500万円以下の罰金 2. 内部統制報告書不提出:5年以上の懲役もしくは500万円以下の罰金 3. 1・2の両罰規定:法人に対して5億円以下の罰金

以上のように厳しい罰則が課される、非常に重要な報告書類です。

内部統制報告書は社外者によるチェックは必要?

内部統制報告書は、監査法人による監査の対象になっています。外部者である監査法人によって、監査が行われます。監査意見は、無限定適正意見、不適正意見、限定付適正意見、意見不表明の4区分に分けられます。適正と判断されるためにも、内部統制の指針表明から運用まで全てを経営者は責任を持って行わなくてはいけません。

内部統制についてまとめ

内部統制とは、企業が存続し、成長する上で欠かすことのできない社内の体制や仕組みづくりを行うことを指します。 上場企業は内部統制評価報告書を提出する義務があり、内部統制を必然的に行うことになりますが、 内部統制は中堅・中小企業、すべての企業にとって事業を行う上で欠かすことのできない取り組みです。 内部統制を行うことは、企業の社会的信頼、成長、業績の向上、従業員の意識や業務フローの改善などすべての企業活動向上につながり、管理や統制を行う上席だけではなく、企業で働く従業員全員が関わるものです。積極的に取り組んでいきましょう。