情シスのかたち

powered by gin

業務改善のメリットやデメリットから具体的な実現方法やフローを解説

働き方改革が施行され、多様な働き方と並び、労働生産性の向上の必要性が叫ばれています。特に日本の労働生産性は先進国と比べて低い状況が続いています。かし、労働生産性を向上させるには一朝一夕に向上させることは難しいです。そこでまずは業種を問わず、取り組みやすい業務改善にスポットライトを当てて解説していきます。

業務改善とは

まず業務改善とは、企業によっても考え方は異なるものの、経営計画の目標達成に向けて各部署の業務プロセスを最適化することであったり、特定の業務(特に生産性の悪い業務)について、効率化を図ることと言えます。

また、日本の多くは中小企業が占めており、大企業と画一的な議論は馴染まないでしょう。例えば、中小企業の場合、小さな改善であっても、最終的な目標が同じであれば、それは大企業にも劣らない立派な業務改善であり、長期的には大きな一歩になり得ます。

業務改善と経費削減の違い

業務改善と類似概念として度々挙げられる経費削減の違いをおさえましょう。

業務改善は生産性の悪い業務の内容を可視化し、修正を加えていくことが求められます。多くの事例に共通する事案では、毎回担当者ごとに異なる対応をし、いわゆる属人化している状態となり、担当者が休みの場合は業務が滞ったり、基本のフローが存在しないために、例外パターンが発生した場合に応用が利かないリスクがあります。よって、業務改善の場合は、誰でもできるように共通の業務フローを作成することから始めるのが適切です。

次に経費削減は、物品購入などで、特にオーダーメイドのような代替性がない物ではないにも関わらず、価格の比較検討がなされていない場合、割高な価格で永続的に購入されているケースも珍しくありません。昨今は、物品によっては、競争が激化しており、比較検討することで、経費削減を図れることも多いのが現状です。経費については、削減ができない物と削減が可能な物とに分かれます。当然、後者の方で議論せざるを得ませんが、そもそも自身の仕事の成果に直結しないことも多く、社員に意識がなければ疑問にすら挙がらない分野です。

業務改善におけるQCDとは

QCDとは「Quality(品質)」、「Cost(費用)」、「Delivery(納期)」の頭文字を取った概念で業務改善を行っていく上では、非常に重要な部分です。

QCDの具体例

QCDは消費者と生産者によっても視点が異なる点は否めません。

例えば消費者からの視点では、下記視点が主な論点となります。

  • Quality(品質):期待している品質が保たれていること
  • Cost(費用):適正な価格で販売されていること
  • Delivery(納期):納期が守られることが前提で、遅すぎないこと

次に生産者からの視点では、下記の視点が重要です。

  • Quality(品質):製品の品質が保持できているか
  • Cost(費用):原価が適切か
  • Delivery(納期):数量と納期は適切か

よって、消費者と生産者では当然、視点が異なります。望ましい姿としては、双方の思惑を理解することができれば、それに越したことはありません。

業務改善の効果やメリット

コストの削減

業務を改善を行うことでコストを削減することができます。まず、コストについては、大きく分けて以下の3つに分かれます。

  • フィスコスト
  • エネルギーコスト
  • オペレーションコスト

フィスコストは、家賃やビルメンテナンス費などを指します。昨今、テレワーク環境の整備が促進し、都心の一等地で高いオフィスの家賃を払う必要性が疑問視されていますが、一般的には固定的なコストと言えるでしょう。

エネルギーコストは、電気代や水道代です。このコストは残業時間を減らすことにより副次的に電気代や水道代も減らすことができると言えます。

最後にオペレーションコストです。このコストは、人件費などが該当します。不必要な人を解雇にするという意味ではなく、業務を効率化することにより、旧態依然の業務フローにメスを入れ、更に付加価値を提供できる分野を創出し、人材を投入できるようにすれば、企業間の競争でも有利に立てるでしょう。

業務の効率化

業務の効率化を進めるうえで大切な視点は、「無理(ムリ)、無駄(ムダ)、斑(ムラ)」を無くすことです。

  • 無理(ムリ)
  • 無駄(ムダ)
  • 斑(ムラ)

まず、無理(ムリ)については、無理な納期設定などが挙げられます。社外の顧客からは繁忙期など、少々無理な発注もあることでしょう。しかし、その場合は、社内の人員を増強し、対応ができますが、問題は社内業務に潜んでいます。無理な納期設定は、必ず、部下のメンタルを蝕み、ワークライフバランスが崩壊し、長期的には生産性が担保されていません。

無駄(ムダ)は非効率な手法が慢性化していることなどが挙げられます。この部分は第三者から指摘されて漸く気づくこともあり、自身の部署では、「それが普通」と感じ、勤続年数が長ければ長いほど、(経験値はあるものの)気づきにくいという怖さも同居しています。

斑(ムラ)は一定期間、業務改善にまい進するものの、時間が経つと以前のような形に戻ってしまうことなどが挙げられます。そもそも業務改善は一朝一夕に成果が上がるものではありません。まずは、試行錯誤しながらも、継続していくことが大切です。

生産性の向上

日本の雇用慣行上、時間に対して賃金を支払う形態が多くを占めています。この時間働けばこの給与を支払うという考え方です。しかし、成果が上がらないにも関わらず、給与は発生しているとも言えます。

また、昨今では働き方改革の提唱などが遠因しワークライフバランスの重要性も叫ばれています。仕事のみでは、自身を高める自己研鑽の時間も取れません。よって、更に企業の利益を上げるには不要な残業代を削減し、浮いた時間で自己研鑽に励んでもらうことで、企業の競争力強化にも繋がると言えるでしょう。

生産性の向上は基本的には無駄(ムダ)を炙り出し、適宜修正していくという考え方です。

労働環境の改善

企業には「人・物・金」の3つの資源がありますが、最も代替性の効かないものは「人」と言えるでしょう。劣悪な労働環境は人の生産性や創造性を蝕み、業務改善への提言も期待できなくなります。しかし、労働環境が改善されると人が活気を取り戻し、クリエイティブな発想も期待され、副次的に不要な残業代を支払うことも少なくなり、有形資産である「金」も増えてくることとなります。

業務改善のデメリット

最大のデメリットは、ある程度根回しが必要があるということです。特に年功序列の色濃い企業では新しいことに着手しようとすると反対されることが多いのが現状です。仕事を奪うという疑念を持たれてしまうと、着手すらできません。よって、仕事を奪うのではなく、業務を改善し、今以上に効率的に働ける環境をつくるという目的を(業務改善に着手する前に)伝えることが大切です。

業務改善の具体的なフロー

業務の見えるか

見える化する目的は、チェックリストにもなる為です。繁忙期でも頭の中で業務を組み立てられるほど、器用な人ばかりではありません。見える化することで、業務の漏れがなくなり、かつ正しい手順で業務を行えるようになります。

課題の特定と抽出

課題が明確になると対策を立てることが可能となります。生産性が悪いものの、その原因(課題)が不確定の場合、そもそも対策を立てることは難しく、場合によっては、全く見当違いの対策にもなりかねません。

身体に流れる血液と同じで業務が滞る場所を特定することが最初にやるべきことです。特定後はその部分を抽出し、治療方法(改善方法)を複数案作成します。複数とする理由としては、業務が滞る背景には多くの場合、複数の原因が絡まっていることが多い為です。

よって、業務改善後も、場合よっては以前の状態に戻ってしまうことも想定すべきです。その場合、複数用意した他の対応策を用いて対応していくこととなります。この対応策は数が豊富であればあるほど、対応の幅も広がるということです。

課題の改善

改善と言っても、何を持って改善できたかは主観的な判断にもなってしまいます。改善とは「悪い部分を良くすること」とされますが、また将来的に元の状態に戻ってしまうこともあり得ます。人が変わっても(元の状態に)戻ったことに気付ける体制の整備の方が重要と言えます。

業務改善の具体的な実現方法

マニュアル化

まずは、マニュアルの作成です。これは、この人でなければできないという「属人性」を防ぐ意味でも有効です。また、他のメリットとして、業務に安定性が出てくることです。今後、リモート化の動きが促進され、必ずしも全員が同じ空間で仕事を行うことが当たり前の時代ではなくなってきます。その場合、誰が業務を(代わりにも含めて)行っても進めることができる体制の整備は必須です。

安定性とは、マニュアル化されていると、業務を(悪い意味で)飛ばしてしまうことを防ぐことができます。安全かつ効率化されることが確実な場合であれば、むしろ飛ばすことは歓迎すべきですが、そのような面が担保されていない場合は効率以前に危険性があります。

アウトソーシング

業務改善は、同じ職場内から声を拾うことが最初のスタート地点になることがほとんどです。しかし、同じ職場内から声を拾う場合、既にバイアスに苛まれている(例えばこの部分は改善不可能な部分と疑いなく決めつけている)ことがあります。その場合、業務改善候補にすら挙がってこないでしょう。当然、業務改善候補に挙がってこなければ、業務改善することはできません。

そこで、アウトソーシングという発想になります。アウトソーシングは、社外の第三者機関へ業務を委ねるということです。メリットとしては、客観的な視点から判断が可能であることです。前提条件として、既にバイアスに苛まれていることも少なく、フラットな目線で手案が可能である点です。

デメリットとしては、当然、費用負担が発生するということです。しかし、それを高いと見るか安いと見るかは企業の体力にもよります。

またアウトソーシングを検討する際には、何を委託するかも重要な視点です。例えば、事務を全て委託するのか、特定の業務を委託するのか、助言をもらいながら、自社でも行うのかなどが想定できます。どのような選択をしても、最終的な目的は、「本来の業務に最大限のリソースを注げることができる」点にあります。

システム化

システム化する際には対象業務の範囲を明確にすることが専決事項です。例えば、スケジュール管理や受注情報、請求情報などが挙げられます。特に頭をひねらなくてもできる単純な作業はむしろ積極的にシステム化することが望ましいと言えます。理由としては他に頭をひねる作業に時間を投資することができるようになるためです。そして、特に単純作業と言われる業務は人の手を介して行うより、システム化した方が確実性も迅速性も高いことは言うまでもありません。

システム化の注意点として、管理方法及びメンテナンスが挙げられます。導入したものの、(例えば消費税)法改正などは、自社でも情報収集する必要があるでしょう。消費税改正のような全国的に波及するような改正であれば、システム会社からも情報提供はあるでしょうが、そこまでではない、業界特有の小さな改正などは、情報を追っていき、常にブラッシュアップしていく必要があります。

次にメンテナンスです。これは、どのようなシステムであっても定期的なメンテナンスは必要ですが、メンテナンス期間中にシステムが使用できない場合も多く存在します。その間の代替手段は早期に想定べきです。例えば電子媒体が通常であったものの、メンテナンス期間のみ紙媒体で運用するなどが代表例です。

また、通常と異なった手段を用いた場合に発生するのは、ニューマンエラーです。代替期間のみチェック体制の人員を増員するなど、予め打てる手を打っておき、かつその旨を周知しておくべきです。誰しも抱える業務があることから、突然指示されても、対応に苦慮することがあるでしょう。

最後にシステム化の最大のメリットは、単純作業の効率化により、本来の業務に最大限のリソースを注げることです。効率することを目的にするのではなく、効率化はあくまで目標達成のための一手段であることを忘れてはなりません。効率化できた際には、本来成果を求められる分野にリソースを注ぎ、最大限の結果を出していく強い姿勢が大切です。